ベース偏愛

 昔からなぜかベーシストが好きで、チェッカーズならユウジ、BO GUMBOS なら永井君。ベーシストって絶対、いい男率が高いと私は思うんですけど。
ジャズを聴くようになってからもこの嗜好は変わらず、Cab Calloway 楽団の Al Morgan、Milt Hinton、Count Basie 楽団のWalter Page、そして普段、聴きにいくバンドでも、CSならTさんだし、NHならKさんだし、DPならBさんだし、DCならIさんだし、やっぱりベース(とベースライン)の人が好き〜。

 と、ここまでは単なる好みの話なんですが、ある時ダンスの先生から「ベースの音を聴け〜!」と言われました。その先生はリンディ界の重鎮にして風雲児、リズムの塊のような人で、音楽にはことにうるさく、なんとレッスンに生バンドを持ち込むという強者です。
 そんな先生が、わざわざ生バンドを連れ込んでまで口うるさく言っていた「ベースの音」。でも当時の私は単純に、「要するにテンポを外すなってことでしょ?」程度にしか思っていませんでした。

 でも最近ちょっと気づきがありました。とある演奏者の方と話したのがきっかけで、2ビートと4ビートについて改めて考えてみたんです。1小節に2拍あるのが2ビートで、4つあれば4ビート。それはわかっているけど、それ以上何かあるのか…なぜかずーっとそれが気になり、ある時、家で曲を聴きながら「これは…2ビート」「これは…4…?混ざってる?」と、ひたすらベース(もしくはベースライン)の音に集中して聴いてみたんです。そうしたらちょっと見えてきた。同じ2ビート、4ビートでも、表現が違うということが。そしてその発見は、とってもダンスに通じるのでした。

 ベースの音を聴いていると、テンポやリズムがわかるだけでなく、その曲のもつ表情を知ることができる。例えばチャールストンだったら2ビート、リンディだったら4ビートとか漠然とした曲に対するダンスのイメージは今までにもあったのですが、同じ2ビートでもチャールストンに合うもの、ケークウォークがよさそうな曲があって、4ビートでもチャールストンがしたくなる曲もあれば、バルボア向きの曲もある。…おそらく今までも無意識のうちにこの曲の雰囲気にはこんなダンス…と思っていたのかもしれませんが、この辺りもっと明確に意識できると、もっと曲とシンクロできるのじゃないかなーと思いました。
 そして同じステップを踏むのでも、曲の雰囲気に合わせてアクセントを変えたりすると、また広がりが出てくる。とくにスウィングアウトやリンディサークルなどのベーシックなステップってシンプルだからこそ、色々な楽しみ方ができると思うのですが、ベースの音にはそのヒントが隠されているのではないかと改めて思ったのでした。とくに女性、フォロワーはリーダーのようにステップの流れや組み立てを作ることは基本的にしないし、もらったステップの中で遊ぶのが醍醐味ともいえるので、そういう意味でもベースラインをもっと意識したらいいんじゃないかと思いました。

 ただベースの音ってそれ自体は派手ではないので、録音(とくに昔の)だと聞こえづらいこともあります。なのでライブの時こそ、ベース奏者に注目してみたらいいかも。演奏している姿を見ればビートも聴き取りやすいし、彼らの紡ぐビートに集中しているとリズムが自然に身体に入ってきて踊りたくなってきます。曲がわからなくなった時もベース奏者を見れば大丈夫!
 ダンサーも、演奏者も「ベースの音」に合わせるわけだけど、ベース奏者って基本的には拠り所が自分しかいないわけですよね。すごいなー。だから何となく、どこかを探ってるかのような表情になってるのかしらん。あー、ベース奏者ってすごい。愛してますっっ!

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