時代のファッション

 「最もエレガントなメンズウェアが生まれた時代」といわれる30年代。サウンディーズや映画で見かけるこの時代のスーツは、他のどの時代とも違う独特の雰囲気をもっています。胸まわりやウエストなど身体のラインを強調するジャケット、ユニークな襟の形、ハイウエストで裾までゆったりと流れるパンツ。マフィアやギャング映画の登場人物を思わせるような、今の時代の目からは、ややイッちゃってる感もある、とても主張のあるスタイルです。

 おしゃれなジャズメンというとすぐに浮かぶのが、キャブ・キャロウェイ。数々のサウンディーズや映画でまさにその30’sスタイルを披露しています。体格のよいキャブ・キャロウェイなら何を着ても似合いそう、なのですが、小柄で首も短いロイ・エルドリッジの粋な着こなしを見た時には「男性を最も美しくエレガントに見せる」という30年代スーツの魅力を改めて実感しました。この時代の男性は本当に格好いい!

 ステージの衣装にハンパなく力を入れていたというのが、ジミー・ランスフォード楽団、そしてデューク・エリントン楽団。レックス・スチュワートの本によると、デュークのこだわりといったら異常ともいえるほど。ステージに合わせてスーツを新調するのはもちろん、実際のステージ照明に合わなければ即刻新しいものを用意させたとか…!団員はしょっちゅう「仕立屋に行って寸法を取ってもらえ」と命じられていたそうです。鴬色のジャケットに、えんじのパンツ、リーダーのデュークはピンクやイエローなどさらに派手だったとか。当時の写真や映像はモノクロが多く、その(異常とも思える)色彩が確認できないのが非常に残念です。

 40年代に入るとジャケットがそれほどシェイプされたラインではなくなり、50年代には肩幅がより広く、パンツはぐっと細身に。襟の幅やデザインにもそれぞれの時代の特徴があります。時代ごとのスタイルの大体の目安を知っておくと、その映像がいつ頃のものか製作年数のクレジットがない時にも見当がつけられます。女性服もボーイッシュ・スタイル、スクール・ルック、ミリタリー・ルックなど時代を反映したスタイルの変遷があり、時代のムードが伝わってきます。

 リンディのイベントには、当時のファッションが好きでヴィンテージを好んで着ているダンサーもいます。とくにリバイバルブームが盛り上がっていた90年代後半のパーティなどは、「これ、いつの時代?」と思うほどにみんな気合いが入っていました。私も少し持っているのですが、やはりその時代のウェアを着ると、その気になるというか、踊りがそれらしく見えるような気がします。そして男性陣曰く、30年代のハイウェストで太めのパンツというのは足さばきがよく、とても踊りやすいのだそうです。

 アメリカのオークションサイト、eBay ではヴィンテージの服がとても充実しています。「ヴィンテージ服」のカテゴリーがあるだけでなく、ヴィクトリアンに始まり、大恐慌時代、戦前、ニュールックなど細かく分けられているので、その時代のデザインの特徴を知るのにも便利です。それから当時のファッションを知るのにおすすめなのが、その時代の広告ポスターやパッケージデザインなどを集めた本。Taschen から「アメリカンアドバタイジング」シリーズというのが出ていますが、30年代、40年代、50年代とあらゆる商品を網羅していて、ファッションや流行、物価などがわかってとても面白いです。

 ちなみに日本の30’sスタイル代表といえば、白洲二郎氏。最近では奥様の白洲正子さんとともにたくさん関連の書籍が出ていて、若かりし頃の写真もちらほら。外人並に体格がよかったという氏の着こなしは、本当に素敵です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です