「リンドバーグがホップした」ことから名付けられたという「Lindy Hop」という言葉は、いつからか「Jitterbug」という名に取って代わられるようになります。(リンドバーグの人気に翳りが見えたのが原因という説も)。
一説によると Jitterbug の名付け親は、Benny Goodman。1938年NYのパラマウントシアターでの演奏時、熱狂して席の通路で激しく踊る若者を見て、「Jitterbug(Jitter は震える、神経質なという意。bug は虫のこと)のようだ」と言ったとか。
また Jitterbug の名を普及させたのは Cab Calloway とも言われています。キャブ・キャロウェイの曲に「Song of the Jitterbug」というのがあります。
Now if you’d like to be a Jitterbug,
The first thing you do is get yourself a jug
Put whisky, wine and gin within
Shake it up and then begin…
ダンスのことを歌った曲というよりは、お酒についての歌のよう。というのも Jitter(または Jitter sauce)とはミュージシャンの間でウィスキーのことを指す隠語で、キャブ・キャロウェイのバンドのトロンボーン奏者が震えを抑えながら「Give me my Jitters」と言っていたのを見て、「Jitterbug」という言葉が生まれたという説もあります。
Jitterbug とはダンサーそのものを示す言葉でもあり、Cab Calloway はサウンディーズ「The Jitterbug Party」の中で、「Are you Jitterbug?」と呼びかけています。
Jitterbug はもともと Lindy Hop に替わる言葉でしたが、やがて East Coast Swing (ECS)や Jive などさまざまなスタイルのダンスを指すようになりました。この Jitterbug が日本語になってジルバとよばれるのですが、日本でいうジルバはアメリカでいうところの ECS にあたります。ECS もスウィング・ダンスの一つですが、6カウントのステップで踊ります。リンディを踊っているとよく「それジルバ?」と聞かれることがあるのですが、リンディとジルバは基本的に別物です。リンディに比べて ECS の方が単純なので、アメリカでも ECS の方が広く踊られているようです。
Lindy Hop という言葉はわりと早い段階で Jitterbug に取って代わられたのか、当時の曲名やイベント名には、Jitterbug の方がよく使われているような気がします。また Lindy Hop は黒人のもの、それを白人が取り入れて Jitterbug になったという見方もあり、あるダンサーの本によると「Lindy Hop が Jitterbug と呼ばれるようになり、白人社会でも受け入れられるようになって、その頃からダンスがよりワイルドで速くなった」とか。