最近手に入れたジャズ関連の本の中から、とっておきの2冊を。
『Black Beauty, White Heat -A Pictional History of Classic Jazz 1920-1950』
クラシックジャズの黎明期から黄金期まで、当時の写真を集めた貴重な一冊です。解説も充実しているので、資料としても読みごたえたっぷり。New Orleans、Chicago、New York、Kansas Cityなど地域別、年代別に章立てされている他、サヴォイボールルームやダンサーが登場する”Swing”章もあれば、ジャズ関連の映画を集めた”Film”という章も。SP版のデザインや、当時のポスターも載っていてグラフィックの資料としても楽しめます。
廉価なペーパーバック版もあるのですが、こちらはかなり印刷の質が劣るとか。USアマゾンではハードカバー版がかなりの高額で出ていましたが、日本アマゾンのマーケットプレイスでは、6000円程度で出品されていました。この装丁、内容の充実度からしたら、ハードカバー版、かなりお買得です!
そしてもう一冊。
『ジャズの歴史物語』油井正一
もともと1972年に刊行され、長らく廃刊状態にあったのが、今年の夏についに復刊したという本書。ジャズ史における重要人物を軸に、ジャズを取り巻く当時の環境、政治や戦争、人種問題までに踏み込んだ俯瞰的な視野、切り口はさすが油井正一氏。
「ジャズという音楽は好き嫌いで語り、人の意見に惑わされず、好きなものだけ聴いていればいい」のだけれども「それでも好き嫌いとは別に、歴史的に意義のある人物、作品を取り上げるのがジャーナリストの使命」とは氏の言葉。たとえばルイ・アームストロングが、デューク・エリントンが、マイルズが、パーカーが、なぜ数多のジャズミュージシャンの中でも傑出した存在であるのか?それをじっくり、きちんと、誠実に油井さんは解説してくれるのです。ジャズファンにとってはなんとなく「あたりまえ」である事実を改めて取り上げ、気づかせてくれるのです。
ジャズ・ダンスについての項目もありました!ジャズとともにアメリカで発展したダンスについて研究したマーシャル・スターンズの著作「JAZZ DANCE」を紹介し、「アル・ミンズとレオン・ジェイムズ(ニューヨーク・サヴォイ・ボールルーム)が…」との記述を目にした時には感激してしまいました。ケークウォークについての記述や、「これはダンスの名前なんですよ」などなど、とにかくよくご存知。「僕は門外漢だから」と言いつつ、非常に勉強になる情報がたくさん詰まっています。
油井さんを評して、平岡正明氏が「アメリカの黒人ジャズメンは、日本に油井正一がいることを幸福と思わなくてはいけない」と言ったそうですが…ほんとにそうですね。こんな本に会えて、幸せです。