スウィング・ダンスをやっている、というと「あー!あれでしょ…」と Glen Miller の In The Mood を口ずさむ人が結構いますが、この曲でリンディホップを踊ることって、じつはあんまりありません(私の経験上は)。
スウィングの王道と思われている Benny Goodman の『Sing, Sing, Sing』。映画「Swing Kids」でも効果的に使われていました。でも、あれこそがリンディホップな選曲かと言われると…少々疑問。
『Swing Kids』の影響もあるのか、90年代のリバイバルブーム真っ只中、パーティの終盤にはこの曲がかかり、ジャムで盛り上がる…というのがお決まりコースのようでした。でもなんかしっくり来ない…と個人的にずーっと思っていたのですが、2007年に出版されたフランキーの本にこんなひと言が。「あの曲でジャムなんかやらない。踊るにしてもドラムが多すぎる」。ま、これはフランキーの個人的な意見かもしれませんが、長年の悶々がちょっとスッキリ。そういえば最近のイベントではほとんどこの曲、聴きません。
世間的にスウィングというと Duke Ellington の名前が挙がります。でもよく耳にするのが「ミュージシャンはデューク・エリントンが好きだけど、ダンサーはカウント・ベイシーが好き」。フランキーと同じく当時活躍していたダンサーの Norma Miller 曰く「カウント・ベイシーがスウィング・ジャズを創り、アーティ・ショウがそれを洗練させた。…デュークはまったく違う。エレガントで、オリジナルなのね。」…上記の発言といい、Normaの言葉といい、なんというか、遠回しに「デューク・エリントンの曲はダンサー向きではない」と言ってるようにも聞こえます。確かにあの膨大な作品群からすると、踊りやすい曲って案外少ないのかも。
スウィングのリバイバルブームに拍車をかけたと言われる Gap の CM。カントリーやスウィングなど、さまざまなダンスにスポットを当てたシリーズで、スウィングバージョンで使われていた曲が Louis Prima の『Jump, Jive and Wails』でした。私がリンディを始めた時も、最初にすすめられた CD はルイ・プリマでした。
アメリカのスウィング DJ のフォーラムには「あなたはルイ・プリマをかけますか?」というスレッドがあります。投票形式で「よくかける」「たまにかける」「Jump, Jive and Wails だけかける」「絶対かけない」という選択肢がありました。こんなスレッドがわざわざ立つところを見ると…みんな同じような思考経路を辿ったのかな?と思います。つまり、何かのきっかけでメチャクチャ流行った→これホントはどうなの?と思うようになる→その後、あまりかけなくなる。もしくは反動でキライになる、というような。こういうことってよくあるのかもしれませんね。
音楽の嗜好は人それぞれ、正解なんてないのですが、ダンスと音楽がお互いを影響しあって成熟したことを考えると、やっぱりその当時の演奏が一番しっくりくるのかなとも思います。もちろんスウィングとはまったく違う時代にも踊れるいい曲はありますが、まずは王道から、というのが私の DJ をする時のスタンスです。