Swingin’ アニメーション

1930~40年代のスウィング・エイジは、アニメーションもスウィングしています。日本にもファンの多いベティ・ブープのアニメは、ジャズ、そしてスウィングをアニメーションに取り入れた先駆的存在。フライシャー兄弟による短編アニメーションの数々は、いま改めてみるとそのクオリティの高さ、そして演奏との見事なシンクロ具合に驚かされます。

その中でもとくに素晴らしいのがキャブ・キャロウェイをフィーチャーした作品の数々。キャブそっくりの動きをするキャラクターが登場しますが、これはロトスコープという技法によるもので、まずモデルとなる人間に演技をさせて撮影し、撮った画像をキャプチャーして、ひとコマずつトレースしていくのだそうです。曲に合わせてキャラクターの動きや背景を作り、さらにその出来あがったアニメーションに合わせて音楽を演奏させるというこだわりようで、まるでダンスの振付をしているかのよう。現代のプロモーションビデオも顔負けの凝りようですね。
ジャズ好きだったというフライシャー兄弟、他にもサッチモや Don Redman などを起用しています。ベティ・ブープは著作権が切れているそうで、Youtube でもたくさん見ることができます。

往年のディズニーアニメにもジャズを使用した名作があり、Benny Goodman の「All The Cats Join In」は、 当時の”Jitterbug” 達の雰囲気が伝わってくる楽しいアニメーション。

当時の描写といえば、アニメーションの中にも差別的な表現はよく登場します。ベティ・ブープに登場するサッチモなんて人食い人種です。Don Raye の「Scrub Me Mama with a Boogie Beat」を使ったアニメも典型的。製作が1946年となっていますが、この時代はまだまだこんな表現がまかり通っていたということに気づかされます。

Betty Boop CARTOON

“Minnie the Moocher”(邦題「ベティの家出」)1932年

踊るジャズメン」で紹介しています。キャブ・キャロウェイのベティ・ブープ初登場作品。 

“Betty Boop,M.D.”(邦題「ベティ博士とハイド」)1932年

フライシャー兄弟の真骨頂、シュールな世界が炸裂。訳がわからないにもほどがありますが、スウィングと絶妙にシンクロするアニメーションは見事としか言えません。一説によるとスウィングの時代はマリファナの時代でもあったとか。それを暗示しているのか、それともスウィングが本来もつトランス感を映像化しているのか…。見ている方もトランスしてきます。

“I’ll Be Glad You’re Dead You Rascal You”(邦題「ベティの蛮地探検」)
1932年 with Louis Armstrong and His Orchestra

サッチモのみならずバンドメンバー全員、土人です。人食いです。邦題もひどい…。

“Snow White”(邦題「魔法の鏡」)1933年
キャブ・キャロウェイが歌う “St. James Infirmary Blues” に合わせて展開するスウィンギーな白雪姫の世界。白雪姫の継母と鏡の会話は、 “Little Brown Jug” のメロディに合わせて。白雪姫ベティ(といっても格好はいつものまま)は Truckin’ をしながら女王に謁見。そして “Minnie The Moocher” もそうでしたが、逃げる時はやっぱり “Tiger Rag”です。

“The Old Man of the Mountain”(邦題「ベティの山男退治」)1933年
“Minnie the Moocher” と同じく冒頭にキャブが登場、その後キャブの動きをロトスコープしたキャラクターが見事なダンスを披露。ムーンウォークの原型ともいわれるキャブのトレードマーク、バックスライドも見られます。ちなみにこのキャブ・キャラクター、後のティム・バートン作品にも影響を与えているとか。

“I Heard”(ベティの炭坑奇譚)1933年 with Don Redman and His Orchestra
演奏するバンドの後ろには、さりげなく「BETTY BOOP’S SALOON」なんて書いてあります。

“Sally Swing” 1938年
スウィング・ブーム真っ只中に製作されたこの作品、テーマもスウィング・ダンスとど真ん中。そして Sally、ダンスが上手すぎる!Shag だ!Peck だ!身体の動き、ステップ、ブレイクの取り方など、これぞスウィングダンサー!一体誰をロトスコープしたんでしょうか…。このサリーちゃん、どうやらベティの後釜として作成されたキャラらしいですが、それほど人気を獲得できず消えてしまったとか。ダンス上手いのに…。

Disney 

Benny Goodman – “All the Cats Join In” 1946年

ベニー・グッドマンの曲に合わせてスウィングするジターバグたち。ファッションをはじめ当時の雰囲気がよくわかる一遍です。途中、赤シマジャケットにカンカン帽でウクレレを弾く「ディキシー風」おじさんが登場。時代遅れだ!と若者達に店の外に放り出されます。このおじさん、よく見るとチャールストンらしきステップを踏んでいるんです。

Music For Everybody with Ludwig Von Drake
ディズニーのTVシリーズ。ジャズやサンバなどさまざまな音楽を取り上げ、ジャズの回では上記の “All The Cats Join In”を紹介します。その前フリとして番組のMCであるドナルドダックのおじさん、ルードヴィヒがチャールストンやブギウギを披露。浮浪者のようなクールジャズメンの描写も笑えます。

「Jungle book」(ジャングル・ブック)1967年
ルイ・プリマの声によるオラウータンの王、キング・ルイが「I wan’na be like you」をスウィンギーに歌い踊ります。また Phil Harris が声を担当したクマのモーグリによる「Bare necessities」も名曲。

その他 

“Scrub Me Mama with a Boogie Beat” 1941年
問題の作品。youtube のコメント欄でも議論になっています。”Scrub Me Mama with a Boogie Beat”という曲自体が、NYハーレムのすごいテクニックを持った洗濯女のことを歌った差別的ともいえる内容なのですが。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です