ハーレムと西海岸のスタイル

 NY のハーレムで生まれたリンディホップは、スウィング・ジャズとともにアメリカ全土に広まりますが、広まっていく中で地域独自のスタイルとして発展していった例もあります。

 ハーレムのサヴォイ・ボールルームで踊られていたスタイルは、今ではサヴォイ・スタイルなどと呼ばれています。一方もともとサヴォイ・ボールルームでも踊っていた Dean Collins という白人ダンサーがロスアンジェルスに移り、独自に発展させたものがディーンコリンズ・スタイル、またLAスタイルなどと呼ばれています。90年代のリバイバルブーム時には、こうした西海岸のスタイルを大々的に掲げた「Camp Hollywood」というイベントがスタートし、そこからハリウッド・スタイルという名前でも呼ばれるようになります。

 ディーン・コリンズは教えるのが上手く、1930年代にはインストラクターとして仕事を始めていたそうです。サヴォイ・スタイルという定義が、当時のサヴォイ・ボールルームで踊られていたスタイルという包括的で曖昧な定義であるのに対し、ディーン・コリンズのスタイルがより定義しやすく、今日までその名とともに受け継がれているのは、そのためでしょう。ちなみにディーンコリンズ・スタイルは、West Coast Swing の原型とも言われています。

 この2つのスタイルの違いは、はっきりと体系づけられているわけではありませんが、サヴォイ・スタイルは黒人的、ディーン・コリンズのスタイルは白人的と言うこともできるでしょう。姿勢やバウンス感、ステップなどにそれぞれの人種的、文化的なバックグラウンドが反映されていると思います。そして当然、音楽もその発展に影響していたと思います。例えばサヴォイ・スタイルだったら Chick Webb や Erskine Hawkins、Lucky Millinder などサヴォイ・ボールルームを拠点としていた黒人系バンド、そして西海岸のスタイルは The Andrews Sisters、そして Benny Goodman などの音楽とともにより特徴あるスタイルへと変化していったのではないでしょうか。

西海岸のスタイル

Glen Gray Orchestra (1941) with Dean Collins & Jewel Mcgowan

The Buck Privates (1941) with Andrew Sisters, Dean Collins & Jewel Mcgowan

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